印象派の画家達の少し上の世代で、近代絵画への道を切り開いたエドゥアール・マネの自画像です。
マネは自画像を2点しか制作しておらず、いずれも画壇での地位を確立した晩年に制作しています。
本作品「パレットを持った自画像」は個人所蔵ですが、もう一点の「自画像」は日本の東京にあるアーティゾン美術館に所蔵されています。
また、両自画像ともスペイン人画家のベラスケスの作品の影響を受けていると言われています。
作品 パレットを持った自画像
本作品はマネの晩年に描かれた2点の自画像のうちの1点で、2010年に約30億円で落札されて当時ニュースとなっていました。
「パレットを持った自画像」
(1878-1879年)
マネは左利きではない事は判明していますので、本作品は鏡に写った自信を描いたと考えられます。
上着の描写は、荒い筆跡で描かれており、パレットや筆も細かくは描かれていません。
また、右側の筆を持つ手は未完の状態でぼんやりと描くに留めています。
写真の発達により、見たものを忠実に描くことから絵画での新しい表現方法を試みたマネらしく、上半身を粗い筆跡でぼんやりと描くことでマネの顔に自然と視線が誘導されるようになっています。
また、マネはバロック期のスペイン人画家の巨匠ベラスケスを尊敬していたとされ、本作品もベラスケスが自身の作品の中に描いた自画像の影響を受けていると言われています。
「ラス・メニーナス」
(1656年)
もう一点の自画像
マネは晩年に2点の自画像を制作、一点は「パレットを持った自画像」でもう一点の「自画像」は東京のアーティゾン美術館で鑑賞することが出来ます。
「自画像」(エドゥアール・マネ)
(1878-1879年)
この作品も「パレットを持った自画像」と同様に粗い筆跡で描かれており、上着の襟が左右逆転していることから鏡に写った自身の姿を描いたと考えられます。
マネはこの「自画像」は個人的な物として公開せず、親しい人のみに見せたと言われています。
また、ベラスケスをはじめとたスペイン絵画で用いられた背景に壁や床の描写をしない様式でえがかれており、影響が伺えます。
「道化パブロ・デ・バリャドリード」
(1635年頃)
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